灰かぶり異聞
灰かぶり。ベッドがなくて毎日暖炉の横で寝ていたから頭が灰だらけの娘。
シンデレラという呼び名の方が馴染みがあるでしょう。
「シンデレラ」という言葉は、恵まれない境遇にあったけれど、最後は幸せを掴み取る女の子の
代名詞にもなっていますが、本当のところ、もともとシンデレラは良い家柄の出身でした。
王子様の妃になってもおかしくはなかったのです。
数多くの貴婦人から選ばれるのだから、その誉れといったらこの上ないでしょうが、
彼女が王子様と結婚できて幸せと感じたのには、彼女の過去に、何か秘密がありそうです。

シンデレラと継母、2人の義姉さんとはもちろん血は繋がってませんが、
父親とも繋がってませんでした。
お父さんは実の娘のようによしくしてくれますが、外交官の仕事でほとんど不在。
シンデレラは毎日こきつかわれて、いじめられて、味方になってくれる人がいなくて
とてもとても孤独でした。
食事も継母たちとは別で、ほんのわずかな量しか許されず、孤独感がストレスに拍車をかけ、
彼女はますます顔も身体も貧相になっていきました。

ある日、シンデレラの屋敷に王様から仮面舞踏会の招待状が届きました。
継母と義理のお姉さん達は舞踏会の支度を全てシンデレラに任せました。

そして当日、豪華絢爛に着飾った継母は
「いいかい、私たちが留守の間も掃除と洗濯をさぼるんじゃないよ。」と言って
2人のお姉さんと従者を引き連れてお城へ向かいました。

お屋敷で独りぼっちになったシンデレラは、もくもくと掃除を始めました。
ふと窓からお城の方を見ると、花火が上がっているのが見えました。
「ああ、私も舞踏会に行きたかったわ。素敵なドレスに豪華なシャンデリア...」
するとそこへ、魔法使いのおばあさんが現れました。
「私はずっとあんたのことを見とったよ。舞踏会へ行きたいんだね?その願いを叶えてあげよう。」
シンデレラはびっくりしました。魔法使いはおかまいなしに続けます。
「いいから私が今から言う物を持っておいで。」

シンデレラは言われた通りにしました。魔法使いがえいっと魔法をかけると、
あっという間にステキな馬車や白馬、従者が揃いました。
次にシンデレラに魔法の杖をかざすと、頭の灰はなくなり、ボロボロの服は
ステキなドレスに、ススこけた真っ黒な木靴はガラスの靴に変わりました。
「貴女はとても美しい。それはもう、王子様に見初められる程だよ。でもね、よくお聞き。
魔法は12時に消えてしまうから、それまでに帰って来るんだよ、いいね」
続けて魔法使いは言いました。
「とても小さい時だったから、もう私の顔を覚えてはいないだろうけど、
私はずっと貴女の幸せを願っていますよ」

遅ればせながら、シンデレラは舞踏会に参加しました。
皆仮面をしているので、継母たちはシンデレラが来ていることに気づいていません。
1人できょろきょろしているシンデレラに、一人の男が声をかけてきました。
「僕と一緒に踊りませんか?」
その男性こそ、王子様だったのです。 シンデレラは王子様と楽しいひと時を過ごしたものの、あっという間に
時計の針が12時をさそうとしていました。
「いけない、もうこんな時間!」
王子様が引き止めるのを振り切って慌てて城を後にしたので、
ガラスの靴を落としてしまいました。

王子様は透き通るような声の、心もきれいな彼女のことが忘れられず、
ガラスの靴を手がかりに国中から持ち主を探し始めました。
見つけ出したら結婚を申し込むよう決めていて、そのことはあっという間に噂になりました。
何しろ仮面で顔が分からなかったものですから、舞踏会に参加していなかった者まで
花嫁候補に手を挙げて、"ガラスの靴の姫君"探しは難色を示していました。
そんなある日、王子と従者がガラスの靴を持って灰かぶりのいるお屋敷に現れました。

最初に継母が履いてみましたが、靴があまりにも小さくて、足が入りません。
次は上の義姉の番ですが、継母はこっそり耳打ちをしました。
「靴がとても小さいから、履く前にお前のかかとを切断しておいで。
王子様と結婚できるのだから、少しくらい痛くても辛抱おし。」
上の義姉は別の部屋でこっそり斧を手に取り、踵を切り落としてしまいました。
その甲斐あってガラスの靴はピッタリ。王子様が言いました。
「貴女こそ、私が探していた姫君だ」
ところが靴から血が溢れていることに従者が気づき、
上の義姉は王子様の探している姫君ではない事がばれてしまいました。

次は下の義姉の番です。継母はまたもこっそり耳打ちをしました。
「上の子は失敗したけど、いいかい、お前は成功させるんだよ。
靴がとても小さいから、履く前にお前の足の指を切断しておいで。
王子様と結婚できるのだから、少しくらい痛くても辛抱おし。」
下の義姉は別の部屋でこっそり剣を手に取り、足の指を切り落としてしまいました。
その甲斐あってガラスの靴はピッタリ。王子様が言いました。
「貴女こそ、私が探していた姫君だ」
ところが、靴から血が溢れていることに従者が気づき、
下の義姉も王子様の探している姫君ではないことがばれてしまいました。

「他に娘さんはいらっしゃいませんか?」との問いに継母は
悔しさで唇を噛みながら「いません」と答えました。
しかし、掃除をしているシンデレラの姿を見かけた王子様は、
「まだ一人残っていますね、彼女を連れてきて下さい」と言ったので、
継母は仕方なく灰かぶりを呼びました。

シンデレラがガラスの靴を履くと、見事にピッタリ。もちろん、血も溢れていません。
はじめから指のない彼女の足を見た従者と継母、義姉はぎょっとしました。
しかし、王子様はかまわず言いました。
「まさに貴女が私の"ガラスの靴の姫君"だ。」
「こんな貧相でブサイクな娘、誰が結婚したいと思うのよ!」
義理の姉さんは2人とも斬った足の痛みと嫉妬心でヒステリックになっています。
「悪ふざけはおよしなさいよ!足の指が無いじゃないの!あんた、わざと切リ落したんでしょう!?」
「お義姉さん、違います。私のは少し前になくなりました。」
王子様はシンデレラの手をとって言いました。
「その声、僕は忘れていません。探していたのは貴方です。
顔が分からなくて、見つけ出すのに随分苦労しました。
ぜひ城にきて、私と結婚してくださいませんか」
シンデレラは今度こそ、幸せな結婚を果たしました。

今度こそ。
そう、彼女は前に一度、結婚をしたことがあったのです。
前の夫はとても暴力的でした。惚れ薬などという姑息な手段で彼女を手に入れるほどの。
もうお分かりの方もいらっしゃるでしょう、彼女は眠り姫だったのです。
ガラスの靴が異常に小さかったのも、以前に自分で指を切ってしまっていたからなのです。
魔法使いは、彼女が生まれたばかりの時に祝福をしてくれた3人の魔法使いのうちの1人でした。
彼女は暴力的な夫から逃れ、ついに本当に自分を愛してくれる人と巡りあえたのです。

暴力をふる王子から離婚を言い渡されたシンデレラ、もとい眠り姫のその後はと言うと…
行き場を失った彼女を助けたのは西の隣国の外交官で、
養女として自分の屋敷に迎えいれました。
しかし不幸なことに彼女を本当の娘のように接してくれた義理の母親は病気で死んでしまい、
義父の新しく迎えた妻が、あの意地悪な子連れの継母だったのです。

こうしてシンデレラは再びお姫様としてやんごとなき身分に戻る事が出来ました。
栄養の豊富な食べ物を食べれるようになったので、
ほほこけた顔はふっくらとした愛嬌のある顔に戻り、
やせ細った身体も豊満で滑らかな曲線を描き、前よりも女性らしくなりました。
健康で丈夫になったシンデレラは子宝にも恵まれ、王子様と生涯幸せに暮らしましたとさ。

=fin=

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